エルマル、ステッドを守る


 混沌によって壊された世界を修復するため、大いなる探索にオーランスが出かける際、嵐の部族を守るためにエルマルを残していきました。エルマルは多くの敵を何度も何度も追い払います。



 最初に現れたのは皮喰らいでした。エルマルはそいつの目に槍を投げつけます。皮くらいは七つの口でもって噛み付いてきましたが、オーランスから借りた楯で防ぎました。そして皮喰らいは大きな足で五度踏みつけてきました。エルマルは最初の四回は避けましたが、最後の一踏みは受け止めて、空へ放り投げました。こうして皮喰らいは戻ってきませんでした。戦いの後、人々が見たのは粉々になったエルマルの姿でした。人々は泣きました。しかし朝が来るとエルマルは戻ってきました。



 爛れの源がやってき、エルマルは彼女もまた倒しました。しかしエルマルは勝利にもかかわらず再び粉々にされてしまいました。そして再び朝が来ると帰ってきました。



 次に来たのは悪腫の作り手でした。エルマルは戦いました。こやつはエルマルを内部から殺そうとし、彼を引き裂きます。しかしエルマルは不変であり、朝になれば彼の輝きは余分なものを焼き尽くし、悪腫の作り手も燃やされました。



 最後に偽りの語り手が、エルマルが昔好いていた女性に姿を変えやってきました。「エルマル、エルマル、あなたは昔は私を愛していてくれました。どうか一緒に来てください」と言いました。エルマルはこの申し出に心が揺らがなかったわけではありません。彼の涙は大地をぬらしました。しかしエルマルは言いました。「お前は私の愛した人ではない。私は妻を愛しているし、オーランスに忠誠を誓ってる。決してオーランスの民を裏切ったりしない」と。すると偽りの語り手は立ち去りました。



 次の日、偽りの語り手が嵐の部族の預言者に姿を変えて再びやってきました。そして「エルマル、エルマル、オーランスは死んだ! お前が王となるのだ」と言いました。エルマルはこの予言に心が揺らがなかったわけではありません。彼の顔は笑みが浮かべられました。しかしエルマルは言いました。「この預言は間違っている彼が簡単に倒されると信じて、何が忠誠だ。」と。すると偽りの語り手は立ち去りました。



 翌日、偽りの語り手がエルマルが一度は仕えた皇帝に姿を変えてまたもやってきました。しかしエルマルは今度は喋らせませんでした。「偽りの語り手、偽りの語り手、私の負けだ。魂を抜き出し、この雄馬に変えておいた。これを捧げよう。そして混沌に仕えよう」と言いました。



 すると偽りの語り手は飢えていたので馬を食べてしまいました。しかし馬はエルマルの魂ではありませんでした。しかしエルマルの輝ける神性ではあったのです。いまやエルマルは偽りの語り手の中にいました。その中には何もありませんでした。如何に姿を変えようと、ただただ空虚なものに過ぎなかったのです。そしてオーランスの楯を用いて脱出し、その空虚さを見抜かれた偽りの語り手は滅びました。



 こうしてエルマルはオーランスの留守を守りぬき、大暗黒の最後にはオーランスを迎えに死者の地まで行き、そこでオーランスから旅の最中の話を教えてもらい、世界の秘密を知ったのでした。