『トロイ』その2:ローマ話

 そういや劇中最後にトロイ王の剣は老人を背負ったアエネアスと名乗る男に渡されました。パリスは彼が誰だか解らなかったようですが、『イーリアス』ではアエネアスつまりアイネイアスは、トロイ王家一族のアンキセスと女神アフロディーテの子供とされて、ヘクトルに次ぐ勇士と知られています。背負われている老人は恐らく父親のアンキセスで、彼と息子アスカニオスを連れてイダ山に逃げ、船で海に出ます。
 この辺りはもう『イーリアス』よりウェルギリウスの『アエネーイス*1』となるのですが、兎も角それからカルタゴでよろしくやったりした挙句、イタリアに来てラティニ人の王ラティヌスの娘ラウィニアと結婚し、融和のためにトロイ人たちは自分たちの風習を捨て、ラティニ人の風習を取り入れます。
 さて皆さん、ラティニですよ、ラティニ。無論、これがラテンになります。彼らがローマ人となるのです。
 先に出たアスカニオスはトロイの旧名であるイリオンを取って、「イリオン生まれのユールス」と言う意味の「イウルス・ユールス」とも呼ばれました。このユールスを端とする一族の名をユリウス一族と言いまして、その子孫の一人がポエニ戦争において活躍したことから「象」を意味するカルタゴ語「カエサル」を家名とし、ユリウス一族のカエサル家が生まれました。そしてその子孫として紀元前100年にガイウスと名付けられる子が生まれます。
 だから終生独裁官ガイウス・ユリウス・カエサルウェヌスの子孫と言ったのです。

*1:アエネーイス岩波文庫でも上下2巻であり。