旧版指輪物語【S@ncho通信さん】

 いやー、懐かしい。久々に旧ハードカバー版の表紙を見たよ。

 ちなみに旧文庫版の表紙はというと、一番古いのがトールキン教授の直筆画で、バクシのアニメ映画公開時にそのポスター絵に変わってしまった。更に細かく言うと、バクシ版も知っている限りでは2種類あって、普通のポスター絵の版と、表紙に「ユナイト映画配給 夏休みロードショー!」の文字が、裏表紙に「サウンドトラック盤〈指輪物語〉ビクターレコード発売」の文字がプリントされている版があったりする。

 などとそんな風に過去を振り返ってみても、実は結構、新版も気に入っていて、何が一番お気に入りかというと、やはり表紙カバーを外してみると、本の本体は真っ赤に装丁されていて、キチンと赤表紙本になる辺りだ。

 訳語もなァ、慣れないというのは確かにあって、新版は読んでいてむず痒くなるのだけれど、文章の誤訳よりも旧版には単語の誤訳というか、トールキン教授からの指示を瀬田氏が無視した例もあるからなぁ。例えば有名どころでは「粥村」*1とか。まあ文句をいうくらいなら、原書で読むのが正しいだろうし、また原書で読むと物語口調が外れるので、非常に心躍るのだけれども。

 と言っても、あの当時を振り返るに、実は『指輪物語』の翻訳に関しては早川書房との競争が存在しており、確か先に出した者勝ちな流れがあったはずで、会社側が中の精度よりも速度を求めたところもあるんだろうな(02/03追記:と、思っていたら間違いだった。競合していたのは文庫版であって、早川書房村上淑郎氏の翻訳で文庫版指輪物語を出そうとしていたところ、評論社が慌ててハードカバー版の版組みのまま縮小して文庫版を出した、とのことだ。となると、瀬田氏が言っていたハードカバー版の翻訳で急がなくてはならない理由というのは、別のことな模様。なんだろう?)。まあ早川版(村上淑郎版)指輪物語ってのも、今になると読んでみたいような気もするが。

 兎も角、海外の記念物になると三部作一冊組で赤い革装丁の本があったりするんだけれども、指輪物語で儲かっているらしいんだから*2、評論社には是非ともそんな感じで記念本を出してもらいたいな。

*1:breeは古西方語で意味は丘だっけ? 塚山丘陵を指しているのは明白。で、トールキン教授は各国語に翻訳する際の注意書きとして、breeは意味を失っても古語がそのまま残った例なので、だからbree hillという地名があり、「ブリー」と読み訳すのが正しいと言っていたりする。だけどもスコットランドだかの古語に「粥」って意味があるのを瀬田氏が拾ってきたようだ。

*2:初版以来〜公開前までの総販売数よりも、公開後のソレの方が多いとのことだし。