ドゥーガル・ディクソン、ジョン・アダムス『フューチャー・イズ・ワイルド』(ダイヤモンド社)

 今より、500万後、1億年後、2億年後の地球はどのように変貌しているのか、果たしてどのような生物が大空を舞い、大地を闊歩し、大海を我が物としているのか*1を予想し、その生態系などを書き表した1冊。科学的道楽とでもいうのだろうかね。『アフターマン』といえば、「ああ、アレ」と思い浮かべる人も多いと思うけど、作者の一人、ドゥーガル・ディクソンはその『アフターマン』の作者でもある。

 作者ら(そして一緒に頭を付き合わせた様々な学者たち)は色々と科学的根拠を提示しているものの、こんなに長いスパンとなっては、当たるか当たらないかなんてどうでもよくって、ただ面白ければいいと思う*2。そして実際、面白かった。空を飛ぶべく進化した魚も良かったけれど*3、やはり個人的ヒットはシルバー・スパイダーだなぁ。

 1億年後の地球において、世界最後の哺乳動物はいつも決まった餌場を持っている。腹が減ればそこに行けばいい。常に種子が山と積まれていて、種子が減ればシルバー・スパイダーがきちんと補充してくれる。共生? ならシルバー・スパイダーは一体何を得ているのか。彼らはその哺乳動物そのものを得ている。哺乳動物を「養う」といよりも、「畜養」しているのである。

 ああ、ウンゴリアントよ。あなたの娘らは1億年後の地球を謳歌しております。
 ロール・プレイング・ゲーマーに言っておくなら、この本には3つの世界が収められている。一番オススメなのは雷鳴から翻訳されてる『トラベラー』だろうかな。探査局員が未知の惑星に降りたちその職務を果たしていると、自分の背丈よりも大きな生物、それも2本の触手を振り回し、8本の脚で大地を練り歩く頭足類が森林から現れるってのは、彼らにとってスゴイ体験になると思うよ。どう?

*1:高く高くスカイタンサー、遠く遠くランドタンサー、深く深くアクアタンサー

*2:カガクテキ・コンキョは、面白さを増すためのスパイスだ。

*3:表紙絵の彼だ。