夜刀浦、ふたたび

 まさかRPGに朝松健がやってくるとは思わなかった。実際、朱鷺田氏が『比叡山炎上』でパルプというか、伝奇を大量に持ち込まようとされたのだろう、朝松を参考として色々と上げられているのをみて、それだけで相当に満足して喜びまくっておりました。また『クトゥルフと帝国』においては、その人名録っぽい箇所で、朝松のデビュー作である『逆宇宙ハンター』シリーズの主人公(になる予定だった人物)のパトロン(それも不老不死族である)の名前が見受けられたりして、それはもう本当に嬉しかった。
 ところがだ。千葉県夜刀浦市が、オフィシャル誌でフォローされるってんだから、何というか、もう、ねぇ、反応に困る。朝松健は、この夜刀浦市という都市を舞台に自分も含めて作家5人に短編を書かせ、アンソロジー『秘神』として編集した。それだけに複数の作家が幾つかの視点で持って夜刀浦を描いているので、少しくらいは厚味のある都市になっていると思う。
 ちなみに上記作品集にて朝松健自身は『「夜刀浦領」異聞』という作品を書いている。朝松は、歌舞伎で築かれた「世界」を自分の武器であるオカルトと言う「趣向」で書こうとし、その次に室町時代を舞台にした伝奇へと向かい始めるわけだけど、この室町伝奇の初期作品にあたる。そういう意味でも夜刀浦にフォーカスがあたるってのは、ちょっとドキドキしてくる。デビューからずうっと追いかけていて、ちょっと眉をひそめるような作品を書いていた時代でも着いていっていた人物が、RPGに触れてくれたのだから、この思いは格別ですよ。
 ちょっと嬉しくって、文章がまとまりませぬわ。