石田五郎『天文台日記』(中央公論新社)

 何度目かの再読。最初に読んだのは確か小学校の図書館で借りたのもので、もう20年以上前の話であるんだけれども、それからまた再販されるとは本当に息の長い本だなァ。初版は1971年?っていうことで、子供の頃ですら10年近くたってから読んでいたわけだけれども、今改めて読んでみると、いやまあ世相やら言葉やら古いのがアリアリで、何だかタイムスリップしたかのような不思議な感じでありました。
 ところが変わっていないこともありまして、それは何かと言うと、本が出版された当時日本最大であり、その当時ですら「それで満足しているのですか」と言われた「188cm反射望遠鏡」ですが、それが未だに現役・国内最大級だということです。いや無論、今となっては野辺山に45m電波望遠鏡がありますし、ハワイには8.2m反射望遠鏡があります。それでも恐らく国内での光学観測の拠点として現役バリバリで活躍しているのでしょう。
 今この時代の「天文台日記」を読んでみたくなった方、「国立天文台 岡山天体物理観測所」のサイトを訪問してみてはどうでしょうか。恐らくは『天文台日記』の香りを感じることが出来ると思います。例えば作中触れられていた「主鏡へのメッキ蒸着作業風景」なんかも見られます。私のお気に入りのページはこちら、「ビジターから観測所への要望と回答」で、「今のお風呂が寒いので早く改修してほしい。」とか「食事で「ふりかけ」などがあるとうれしい。」など、人が生活していれば何かと色々あるものだなぁと、『天文台日記』に思いを馳せながら楽しく読ませていただきました(……覗き趣味っぽいですが)。