「古来より日本は神の廃棄場であった」

 朝松健が『魔術戦士』の1巻だか2巻だかで作中人物である木村信弘(文化人類学者)に言わせた言葉でして、「日本は天魔の支配する国ゆえに」に対して、この言葉を思い出しました。
 一巻でした。以下に引用します。

「邪神の流刑地……?」
「そう。最初は中国大陸や朝鮮半島なんかで、他の神々に淘汰された弱小神が、それを崇拝することをやめない集団とともに日本に封じられたんだろう。
 そのうち神々を収監するのに最適の島があるって話が中国から全世界に伝わり、東南アジアやインド、ペルシャあたりまでもが、我も我も、と古くなった神、力を失った神、祟りをなす神なんかを信仰者もろとも日本に流刑しはじめた。
 ――つまり、神々のアルカトラズさ。……いや、邪神という核廃棄物の投棄場といった方がイマ風かな……」
「なるほど。それで――豊葦原中國は殘賊強暴横惡之藭者ちはやふるあしきかみどもで溢れていたという訳ですか。その邪神たちの封土が朝廷によって平定され、今日の日本に変わっていった、と」
「まあ、おおむね、そういうことだな。ただここで強調したいのは、古代の天皇家が単なる島国の征服者ではなくて、強力な呪術祭祀の集団であったってことだ。
 彼らがどういう呪術を使えたかというと、いかなる邪神悪神といえども、その神格に内在する反対面――つまりポジティブな面を拡大させ、荒ぶる魂を奇魂くしきみたま幸魂さきみたまに変造する術であった……」

 この、日本には様々な悪なる存在が集められている、という考え方は、実は朝松健作品を読む上では重要なんじゃあないかなぁ、などと実は思っていたりする。長々と氏のデビュー以来読み続けているわけだけど、それでもまだそんな確証がある訳ではないのですが……。