『7th Sea: Second Edition』(John Wick Presents)

Ayukata2016-07-18

  1. 『7th Sea: Second Edition』の世界
  2. 『7th Sea: Second Edition』のキャラクタ、成長
  3. 『7th Sea: Second Edition』の武器
  4. 『7th Sea: Second Edition』の判定

ここ最近、1版の『7th Sea』で遊んでおり、またそろそろ、だいたい7/20ごろには2版の物理媒体での販売も開始*1されるということもあって、7月だし海の日だし丁度いいかと『7th Sea: Second Edition』のことを書いてみる。
さて当初、ドラフトであれベータ版であれ、2版の実物を目にしていたなかったころには、いや実際には2版を目にした当初も、1版の続き物だと思っていた。『Cyberpunk』(R. Talsonian Games)のように数十年後の世界かな*2、と思っていたのだ。新興国家が生まれていても、ただ独立を果たしたのかな、くらいの認識でいた。
ところが実際は、歴史や地形、舞台設定なども、似通ってはいるものの1版のころから一掃されてまったく新しい世界になっていた。あわせてルールもガラリと変わった。思い切ったことするなぁ、と思ったが、結構固定層のファンがいるようなので、仕切りなおすことによって新規ユーザが入りやすくなる意味もあるのだろうか。そしてその上で作者がやりたかったこと、そこについてはブレていないので、だから「Second Edition」を名乗るのだろう。
それは何かというと、近世に足を踏み入れ民衆に国家意識が生まれ始めたこの時代、旧大陸の外へと大きく乗り出す大航海時代の舞台で、名だたる悪漢、未知の新大陸、国内外の陰謀、海を行く海賊、そうした諸々に剣術や魔術、知恵や侠気で立ち向かう冒険活劇*3なのである。
つまりは1版でも2版でも、世界が変わろうがルールが変わろうが、やはり『7th Sea』は『怪傑ゾロ』や『三銃士』に『宝島』、新しいところだと『パイレーツ・オブ・カリビアン』を楽しむゲームということだ。
では次に、その新しくなったセアー【Théah】大陸について触れていく。

*1:7/20ごろには2版の物理媒体での販売も開始:電子媒体は2016/6/15に発売された。

*2:『Cyberpunk』(R. Talsonian Games)のように数十年後の世界かな:『Cyberpunk』は2013年、『Cyberpunk 2.0.2.0.』は2020年、『Cyberpunk v3』は2030年代。

*3:冒険活劇:ルールブックの序文では「剣術と魔術、海賊と冒険、外交と陰謀、学術と探検、恋愛と復讐」と書き出されている。

『7th Sea: Second Edition』の世界

セアー大陸は……ヨーロッパである。
中世ヨーロッパ風ファンタジー世界という文言を目にすることがあるが、そうセアーは紛うことなく(これ以外に説明のしようがないくらい)、近世ヨーロッパ風ファンタジー世界である。それがどれぐらいかと言うと、『ウォーハンマー』のオールドワールドと同じ程度にヨーロッパ風だ。

まず大陸の中心にアイゼン*1【Eisen】がある。それを軸に西にはモンターニュ*2【Montaigne】、南にはカスティーリャ*3【Castille】、東にはサマルティア共和国*4【the Sarmatian Commonwealth】があり、その更に北東でウスラー*5【Ussura】に至る。大陸の北の半島にはヴェステンマーンナーヴェンヤア*6【Vestenmennavenjar】があり、南の半島にはヴォダーチェ*7【Vodacce】が、大陸から海を隔てて北西に行けばグラマー諸島*8【the Glamour Isles】があり、そこではアヴァロン*9Avalon】、高地州*10【The Highland Marches】、イスモニア*11【Inismore】がアヴァロン連合王国*12【the United Kingdoms of Avalon】をなしている。
また今のところまだPCとしては選択できないがセアーの外に目を向けると、東に行けばキャセイ*13【Cathay】、南東には三日月帝国*14【the Crescent Empire】、そして海を大きく隔てると南にイフリ*15【Ifri】、西に新世界*16【the New World】までもある。
さらにこの世界での主要な宗教は預言者教会*17【the Church of the Prophets】であり、その最大派閥がヴァチシン*18【Vaticine】に本拠地を置くヴァチシン教会*19【the Vaticine Church】なのだが、オブジェクション/異議派*20【Objectionism】もすでに生まれ出ており、両者の戦いはアイゼンを舞台に30年に渡る十字架戦争*21【the War of the Cross】を引き起こした。
こうして豊かな大国であったアイゼンは国力を落とし、荒廃し妖異がさ迷う土地になった。
またオブジェクションに対抗して教会内では異端審問団が勢力を伸ばし、カスティーリャでは宗教裁判が横行している。
そのカスティーリャに4年前に攻め込んだモンテーニュは世界随一の国ではあるが、多くの民衆は「世界の皇帝」による圧制に苦しんでいる。
それとは逆に「黄金の自由」の国と呼ばれるのがサルマティア共和国である。連合王国ではあるが、その王は選挙で決められ、権力は議会が有する。しかしその議会も近年腐敗が蔓延りつつある。
またもう1つの連合国家のアヴァロンは、逆に高地州やイニスモアの住人が連合を良しとせず解放を求め、3王国の統一を保とうとするアヴァロンと衝突が起きている。
そうした連合国家がある中で、ヴォダーチェは「富こそ権力、権力こそ富」の名のもとに今では7人の豪商によって分裂しており、それぞれが別途、世界の果てを目指し相争う。
もう1つの引き裂かれた国家がウスラーである。この技術乏しい辺境国では、近年ツァーが不可思議な死を迎えた。そうして長子と後妻がその後継を争っている。
そしてヴェステンマーンナーヴェンヤアは野蛮な国と思われつつも、最も経済を支配している国であり、各国の思惑が錯綜する土地である。組合を有し、その組合で使用されている通貨ギルダーが各国で採用されている。
この混乱渦巻く中を悪漢がうごめき、ヒーローが様々な手段で立ち向かう*22
これがセアー世界であり、これが『7th Sea』である。

*1:アイゼン:神聖ローマ帝国

*2:モンターニュ:フランス。

*3:カスティーリャ:スペイン。

*4:サマルティア共和国:ポーランド・リトアニア共和国

*5:ウスラー:ロシア。

*6:ヴェステンマーンナーヴェンヤア:北欧。

*7:ヴォダーチェ:イタリア。

*8:グラマー諸島:ブリテン諸島

*9:アヴァロン:イングランド

*10:高地州:スコットランド

*11:イスモニア:アイルランド

*12:アヴァロン連合王国:イギリス

*13:キャセイ:中国。

*14:三日月帝国:オスマン帝国

*15:イフリ:アフリカ。

*16:新世界:アメリカ。

*17:預言者教会:キリスト教

*18:ヴァチシン:ヴァチカン。

*19:ヴァチシン教会:カソリック教会。

*20:オブジェクション/異議派:プロテスタント。またウスラーにはさらに別派のウスラー正教会【the Ussuran Orthodox Church】がある。

*21:十字架戦争:三十年戦争

*22:ヒーローが様々な手段で立ち向かう:例えばアイゼンにはウンゲテュームイェーガー【Ungetümejäger】(怪物狩人)、カスティーリャではミラビリス【Mirabilis】(司祭)が、モンテーニュではレヴォリューショネール【Révolutionnaire】(革命家)が、アヴァロンにはスイー【Saoi】(賢者)やショウンアエー【Seanchaidh】(戦詩人)が独立を夢見る中に統一庁調査官が、ヴォダーチェにはエスプロラトーレ【Esploratore】(探検家)が、サルマティア共和国にはポスウォヴィ【Posłowie】(元老)が、ウスラーには進歩主義者が、ヴェステンマーンナーヴェンヤアにはギルドメスターレン【Guildmästeren】(組合長)がいる。

『7th Sea: Second Edition』のキャラクタ、成長

その、世界で活躍するヒーロー。このゲームではプレイヤ・キャラクタは「ヒーロー」と呼ばれる。
1版では能力値、技能、特徴などをすべてひっくるめて100ポイントで購入していく形であったのが、それぞれ作成で切り離されたので一気にヒーロー作成は容易になった。色々、キャラクタを示す要素*1がある中、このゲーム特有の要素もいくつかあるのだが、その中でもここではともに「物語の展開」への主要な誘因となるアルカナと挿話について触れておく。

アルカナ

「愚者」とか「魔術師」とかのアレだが、1版と違って2版ではこのゲーム独自のアルカナに変更された。全部で20種類あり、それぞれ長所【virture】と短所【hubris】を有している。例えば

  • 「愚者」
    • 長所:狡猾(危機を回避できる)
    • 短所:好奇心(危険な何かを調査してしまう)

とか、

  • 「皇帝」
    • 長所:指揮(他のヒーロー全員が1ヒーローポイント獲得)
    • 短所:短気(自制心を失い怒り出し、トラブルを引き起こす)

という形である。ヒーローはその中から長所と短所を1つずつ持つことになる。これは選んでも構わないし、ランダムでも構わない。
両方ともセッション中に1度だけ発動することができ、長所はコスト無く利益を得られる。一方で短所は問題を引き起こしてしまうが、その代わりとしてヒーローポイント1点を得られる。プレイヤから見ればヒーローポイント獲得のコストしての問題発生だが、システムから見れば短所の機能はストーリの予想内/外の展開への誘導であり、ヒーローポイントを得られるのはそれへの誘因なのだろう。

挿話【Story】

ヒーローを作るにあたって、この挿話を決める。
これはマスタが用意するシナリオとは関係なくプレイヤが決めるものであり、「復讐:無実の罪を着せられた。目にもの見せてやる」といった風に作成する。こう書くと背景設定のようであるが、実際はそうではない。
この挿話を決める際には併せて「結末」と「報酬」を決めなくてはならない。「憎いあいつを這いつくばらせる。」などという風に、どうすればこの挿話が結末を迎えるのかを最初に決めておく訳だ。そして挿話がその結末を迎えた時に「技能〈威圧〉1ランク上昇」するという風に得られる報酬を決めておく。
つまりシナリオではなく、この挿話のシステムがヒーローの経験であり成長となる。そしてこれによってマスタはヒーロー個人の物語をシナリオに絡めるよう誘導されるし、プレイヤはシナリオだけではなく自分のキャラクタの物語をシナリオに絡めるよう誘導されることになる。

ヒーロー作成

こういう形で、マスタが作ったシナリオにプレイヤが関わるだけでなく、プレイヤの発案がシナリオを揺さぶりやすいような、もしくはプレイヤが自発的にシナリオを揺さぶりたくなるような要素を、ヒーローは初めから有している。
これが『7th Sea Second Edition』でのロールプレイの誘導となる。

『7th Sea Second Edition』のキャラクタ・シート

*1:キャラクタを示す要素:キャラクタ・シートを見てもらうのが早いが、国籍、名声、能力値、背景、技能、特徴、負傷管理、アルカナ、挿話などがある。

『7th Sea: Second Edition』の武器

こうして出来上がったヒーローが、何を武器に妖異や悪漢、海賊、未知の世界、冒険、そういった諸々に立ち向かうのか。
ここでは単純な武器についてもそうだが、まずこの世界でヒーローの大きな力になってくれる魔術【Sorcery】、剣術流派【Duelist Academy】、秘密結社【Secret Society】の3つについて触れていく。ただ、これらはそれぞれ幾つか種類があり、それぞれで効果が異なっているので、簡単な説明を添えた箇条書きですませていきたい。

魔術

セアーには魔術がある。
この魔術を使うには、ヒーロー作成時に各国に用意されている魔法使い枠の背景を取得するか、2点の特徴である[魔術]*1を取得する必要がある。
ここで注意が必要なのは、魔術は国籍によって左右され国によってすべて異なるという点である。

  • アイゼン
    • ヘクセンヴェルク【Hexenwerk】
      • 初期背景:ヘクセ【Hexe】/魔法使い
      • 効果:妖異に対抗するために、人の死体を材料に秘薬【Unguent】を作る。
  • ヴォダーチェ
    • ソルテ【Sorte】
      • 初期背景:ソルテ・ストレガ【Sorte Strega】/運命の魔女
      • 効果:
  • ウスラー
    • 母の手/ダール・マトゥーシュキ【Dar Matushki】
      • 初期背景:マトゥーシュカに触れられし者【Touched by Matushka】
      • 効果:マトゥーシュカ【Matushka】から贈られた授け【Gift】でもって、
  • グラマー諸島
    • アヴァロンの騎士
      • 初期背景:遍歴騎士【Knight Errant】
      • 効果:シーの祝福を受けたエリロッドの騎士【Elilodd’s Knights】の魂を受け継ぎ、魔法【glomour】を振るう。
  • サマルティア
    • 【Sanderis】
      • 初期背景:ジーニース【Žynys】(予言者)/神託
      • 効果:ディーヴァス【dievas】と呼ばれる魔法生物と契約を結び、その超常の力を借り受ける。
  • モンターニュ
    • ポルテ【Porté】
      • 初期背景:ソルシエ・ポルテ【Sorcier Porté】/門の魔術師
      • 効果:貴族に伝わる魔術で、あらかじめ決めておいたものを物を引き寄せたり、物や人を固定の場所に転移させる。
魔術に似たもの

さて上記の一覧からはヴェステンとカスティーリャが抜けている。これらの国には魔術はない。ただヴェステンには古い神の奇跡とも言うべきルーン魔術が生きており、教会によって魔術が滅びつくされたカスティーリャには科学の力が生まれ出ている。

  • ヴェステン
    • 初期背景:スカールド【Skald】/吟遊試人
    • 効果:セイズ【Seidr】と呼ばれるルーン魔術を使い、人の心に干渉したり未来を読む。
  • カスティーリャ
    • 初期背景:アルキミスタ【Alquimista】/錬金術
    • 効果:錬金術を用い、爆発物や能力値増強剤などを作り出す。

剣術

スワッシュバックリングなのだから、セアーには様々な剣術流派が当然あって、それぞれの剣術道場も存在している。ここでは各国の主な剣術だけを紹介しておく。
いずれにしてもシステム的にはヒーロー作成時に初期背景として決闘家を取るか、5点特徴の[剣術道場]を取ることで、その道場で「斬撃【Slash】」「受け【Parry】」「誘い【Feint】」「刺突【Lunge】」「強撃【Bash】」「返し【Riposte】」といった基本の動作や流派独特の形を習得できる。

  • アイゼン
    • アイゼンファウスト【Eisenfaust】
      • 片手にパンツァーハント*2【Panzerhand】を装備し、防御主体で相手のすきを狙う。
  • ヴォダーチェ
    • アンブロジア【Ambrogia】:左手に主武器、右手にマン・ゴーシュと逆に構えた形が特徴の近年の流行剣術。
  • ヴェステン
    • リーグストラ【Leegstra】:重い武器を両手に1本ずつ構える剣術で攻撃にのみ特化している。
  • ウスラー
    • ミレリ【Mireli】:旅の踊り子の両手に曲刀を持った剣舞であるが実戦でもまた有用である。
  • カスティーリャ
    • アルダナ【Aldana】:利き腕でない手を使わずに背中に回しておくのが特徴の攻撃主体の剣術。
  • グラマー諸島
    • ドノヴァン【Donovan】:用心棒によって創始された剣術で、自分や他人を守ることを主体とする。
  • サルマティア
    • サバト【Sabat】:チェスの定跡から発想を得た防御主体のスタイルで、相手の疲労を待つ。
  • モンターニュ
    • ヴァルル【Valroux】:利き手にフェンシング、もう一方にマン・ゴーシュを装備し、防御を主とする。

秘密結社

こうしたヒーローが自身で学ぶ魔術や剣術だけではなく、ヒーローの活動を手助けしてくる組織がセアーには存在している。それが秘密結社である。
秘密といっても様々で、内部の組織は見えなくても存在はあからさまな組織もあるし、知る人ぞ知るといった組織もあるが、共通して言えるのは、何れも人々のために働いており、またその為にヒーローを支援し、そしてまたその為にヒーローの支援を期待している組織である、ということだ。

  • 沿岸組合【Brotherhood of the Coast】
    • 自由と開放……、そして弱者を食い物にする連中を襲うため黒旗の下に集った海賊たち。
  • 探検家協会【The Explorer’s Society】
    • 世界から消えてしまった種族の残した廃墟を調べ、古代の真実を探し求める学者や冒険者たち。
  • ディ・クロイツリッター(十字軍騎士団)【Die Kreuzritter】
    • 怪物と戦うための秘儀を守り、解き放たれた悪鬼【horror】から人々を守る秘密の戦士たち。
  • 見えざる僧団【The Invisible College】
    • 異端審問団の間近で活動し、これを打倒し教会の再建を願う聖職者の一団。
  • 薔薇十字騎士団【Knights of the Rose & Cross】
    • 強力な秘儀を巧みに振るい、誤りを正し正義をもたらす、セアーをさ迷う遍歴騎士たち。
  • ロス・ヴァガブンドス(侠客)【Los Vagabundos】
    • 有徳の貴族を守り、その地位に相応しくないものを打倒するための用心棒たちによる秘密の一党。
  • モーチューテス・スカラ(祖母の肩掛け)【Močiutės Skara】
    • 十字架戦争の灰燼から生まれ、これを最後に戦争を終わらせ平和をもたらす方法を探し求める、「祖母の肩掛け」と呼ばれる集団。
  • リラスシャレ(解放者)【The Rilasciare】
    • 世界から2つの「大腐敗」、すなわち君主制と教会を取り除こうとする無神論者たち。

付記:剣とか弓とか銃とか

そういった武器についても一応ここで触れておく。
とはいえ『7th Sea: Second Edition』』には細かな分類など存在しない。つまり、それはこのゲームの本質ではないということだ。武器の性能の細かな違いなどは、『ロールマスター』みたいなゲームであれば重要だろうが、このゲームに置いてはそうではない。レイピアとマン・ゴーシュだ、両手剣だ、ナイフ投げだ、などなど、銃以外は性能に差はない。唯一、前述の剣術流派によって推奨される武器、ボーナスが付く武器があるが、それを抜くと成功度であるレイズをいくつ出せるか、ただそれだけである。
なのでこのゲームではシステム上の武器の分類は以下の4つにしか別けられない。

  • 〈格闘【Brawl】〉をリスクで使う身体武器
  • 〈武器【Weaponry】〉をリスクで使う近接武器
  • 〈狙射【Aim】〉をリスクで使う銃以外の遠距離武器
  • 〈狙射〉をリスクで使うが威力の大きい火薬武器

*1:2点の特徴である[魔術]:ヴェステン出身者は4点特徴の[セイズ]、カスティーリャ出身者は4点特徴の[錬金術師]

*2:パンツァーハント:鉄の手。アイゼンで使用される攻撃用の篭手。

『7th Sea: Second Edition』の判定

このゲームの判定は「リスク【risk】」と呼ばれる。文字通り、危険でなければ判定でない。そして危険であるが故に、判定つまりリスクには成功しても失敗しても「代償」が付きまとう。この代償を伴わないのであればリスクではなく、そもそも初めから判定など行われない。
その「代償」を含めたリスクの3要素や、このゲームにおける成功度とも言うべきレイズ【raise】の算出など、この判定全体には幾つか他には見られない点が見受けられる。
ここではその、判定方法の特徴的な部分について触れていく。

リスクの3要素

さて先述の通りリスクは3つの要素に、つまり「手段【Approach】」「代償【Consequence】」「好機【Opportunity】」に別けることができる。といって、「手段」は何ていうことはない。どんなマスタでもプレイヤでも普段からやっていることで、マスタによる舞台設定、状況説明の後、

  • 問題解決のために何をするのか

そこの決定が「手段」である。これによってリスクに使用される能力値(2〜5点)と技能(0〜5点)が決定され、その合計点が実際に振るダイスの数となる。

マスタ「城中、今いる部屋は燃えて、また色々と破壊されてる。何かするなら3つの物が目に入る。壁にはタペストリー、それからシャンデリアがロープで吊るされてる。また鎧一式が飾られてる。どうする?」
プレイヤ「シャンデリアのロープを切って、それで下に降りよう」
マスタ「OK、〔筋力〕+〈運動〉のリスクかな。君は炎を避けてロープを切って、それを使って壁まで降りようとする」

代償と好機

次に「代償」がマスタによって決められる。どんなリスクであっても最低1つは課せられる

  • リスクを試みることで負う不利な要素

のことである。しかし「決して避けては通れぬ」と、そこまでではない。
成功度数であるレイズによっては避けられるペナルティであり、代償宣言時に「いくつのレイズによって回避できるか」これも同時に宣言される。

マスタ「さてさて代償は、炎が燃え盛ってて窓際にたどり着くには火傷で2負傷だ。それが嫌なら1レイズ払えば1負傷、2レイズ払えば2負傷はチャラにしよう」

そしてレイズによって買えるのは代償の打ち消しだけではない。こちらは必ず起きるわけではないが、マスタの判断により時にボーナスとも言うべき「好機」が発生する。これは

  • リスクそのものには関係ない有利な機会

であり、これはレイズを使うことで勝ち取れる。

マスタ「それと好機も1つ。テーブルの上に例の悪漢からの手紙の束があるね。ただし炎がすぐ間近まで迫ってる。脱出の間際に手紙を入手するなら1レイズの支払いが必要」

ダイスロールとレイズ

さてリスクの解決方法ではあるが、「準備」で指定された能力値と技能の点数の合計分だけ10面体ダイスを振る。そしてその出目を組み合わせて、いくつ10以上を作れるのか、その数が成功度数というべきレイズとなる。
極論、ダイスを2個振って10のゾロ目であれば2レイズであるし、ダイスを9個振ってすべて出目が1なら0レイズになる。

〔筋力〕4で〈運動〉2。振れるダイスの数は6個である。結果、出目は10、7、5、5、2、2。
10を作ってみると、10(1レイズ)、5+5 = 10(1レイズ)、7+2+2 = 11(1レイズ)の合計3レイズであった。

レイズの使用

ここに至って、リスクの結果が明らかになる。ダイスロールで得たレイズを払い、行動成功や代償の回避、好機を買っていくのだ。
まずはそもそものリスク成功のため、1レイズは必ず支払わなければならない。
ダイスロールの結果、1レイズも作れなければそのリスクは失敗である。また1レイズしか作れなければ、リスクそのものは成功するが、代償はすべて被るし、好機があってもそれは見逃すしかない。
1レイズだけでは、行動に成功してもペナルティを被る限定的な成功に過ぎず、一般的なRPGにおける問題の無い成功をなすには、最低でも2レイズ以上は必要となる。

プレイヤが得たのは3レイズ。まずは1レイズを使って、窓にたどり着きロープを使って壁を降れることにする。次に1レイズで、代償の2負傷のうち1負傷を打ち消す。そして最後に残った1レイズで好機を掴み、脅迫状を手に入れることにした。

要はこれまた準備と同じではあるのだが、マスタを経験してる人なら感覚的にやっているであろう、

  • 「うーん、1成功か。じゃあ何とかギリギリ成功したよ」とか
  • 「お、クリティカル! じゃあついでに追加情報をあげよう」

そういった演出のルール化になる。
他のよく見るシステムと違うのは、そういうった選択肢を事前にマスタが指し示し、そしてそれに対してどのように成功度を利用するのか、それをプレイヤに委ねるのが『7th Sea: Second Edition』の判定となる。
今まで何度か触れたことだが、シナリオの揺さぶりや行為判定といったところにこういう形でプレイヤが関与する余地をあらかじめ作って、そしてそれをシステム化している、そこが『7th Sea: Second Edition』の肝になる点なのだと思っている。