ヒーロークエストで相対する敵:その2
さて自分たちで用意する方法ですが、これは事前に用意できる分、様々な用意のヴァリエーションがあります。
例えば共同体参加者が敵に扮する方法。PCゲーム『King of Dragon Pass』(A#)では、確かアロカと戦うヒーロークエストが存在しておりました。このゲームでのヒーロークエストは紙芝居の様に留ごとに一枚の絵が表示されるのですが、最後の一枚である帰還のイラストは、それまでの戦いのイラストとはうって変わって、ズダボロの竜の着ぐるみから、「はぁー、やれやれ。無事、終わったぜ」という風に出てくるオヤジの絵でした。
これは佐渡や四国などでよく行われている、奉納神事としての能楽などの芸能に近しいものがあるのではないでしょうか。「土蜘蛛*1」なんかヒーロークエストのネタに合うような気もします。
次に物や自然を敵に模す方法。ウロックスをいさめる場合、本当にウロックス信者を用意するのではなく、暴れ牛を用意して棒と投げ縄で捕まえるという風にするわけです。もしくは山羊を模した人形を打ち砕くことで、疫病退散の儀式とすることもあるでしょう。神事としての一人相撲なんかも、これに含まれるのかな。
そして最後に敵を調達する方法。敵対氏族やもしくは旅人なんかを捕まえて、それを無理矢理ヒーロークエストの参加者にしてしまう方法です。ルーンクエスト時代の話になりますが、『太陽領【Sun County】』というサプリメントに収められた小話では、太陽領にてオーランス信者が捕らえられ、無理からにイェルマリオの神事の参加者にさせられるというのがありました。
まあ無理矢理に英雄界に連れ込んで、「1時間待ってやる。好きなだけ逃げるがいい」「応。1日逃げ切ったなら、命と両手に持てるだけの黄金をくれてやろうぞ」「ヒ、ヒッー!」(1時間経過)「狩りだ! 狩りの時間だ!」「弓を取れ!」「馬を引け!」「捕虜など要らぬ。殺せ!」「殺しつくせ!」「イィーヤッホーイ!」みたいな感じ?
これら自分たちで用意する方法は予定調和的でもありますので、それほど大きな効果を期待できないのかもしれません。ですが「1年の豊作を祈る」であるとか「旅の無事を祈願する」などの場合には充分に有効な手立てでしょう。
また予定調和的とは言えヒーロークエストなのですから、何が起こるか解りません。儀式による恍惚感のあまり没我の境地に達し、中の人が(その力も含めて)アロカになりきってしまうこともありうるでしょう。用意した人形が本当に動き出さないと誰が言えるのでしょうか。そして生贄が強敵にすりかわっていることもありうるはずです。