林野類第六

    • 『説文』によると、平地にある生い茂った木々とのことである。音は「力尋」の反切(和名は林【八也之/ハヤシ】)。
    • 説文云、平地有繁林。力尋反(和名、八也之)。
    • 『毛詩』によると、高く平たいところを原と言うとのことである。音は「源」(和名は原【八良/ハラ】)。
    • 毛詩云、高平曰原。音源(和名、八良)。
    • 『四聲字苑』によると、郊牧の外の土地*1とのことである。音は「以者」の反切。または墅とも書く(和名は野【乃/ノ】)。
    • 四聲字苑云、郊牧外地。以者反。又作墅(和名、乃)。
  • 曠野
    • 『日本私記』によると、(荒野ら【阿良乃良/アラノラ】)とのことである。
    • 日本私記云、(阿良乃良)。
    • 正しくはサイと書く。顧野王が考えるに、塞とは難所であり、そのため内外を隔てるということである。音は「先代」の反切(和名は【曾古/ソコ】)。
    • 正作サイ*2。顧野王案塞險悪之處所、以隔内外也。先代反(和名、曾古)。
    • 呂氏春秋』によると、水のない澤を藪*3と言うとのことである。音は「蘇后」の反切(和名は藪【也不/ヤブ】)。
    • 呂氏春秋曰、澤無水曰藪。蘇后反(和名、也不)。
    • 風土記』によると、水と草が交わるところを沢と言うとのことである。音は「宅」(和名は沢【左八/サワ】)。
    • 風土記云、水草交曰澤。音宅(和名、左八)。
    • 尚書』によると、莱夷*4が牧をするということである。音は「目」。孔安国が言うには、萊夷とは地名とのことである。可以放牧(牧【ムマキ/無萬岐】)。
    • 尚書云、萊夷爲牧。音目。孔安國云、萊夷地名可以放牧(無萬岐)。

*1:郊牧の外の土地:『説文』巻五には「邑外謂之郊、郊外謂之牧、牧外謂之野、野外謂之林、林外謂之冂/邑の外を郊と言い、郊の外を牧と言い、牧の外を野と言い、野の外を林と言い、林の外を冂(境)と言う」ともある。

*2:サイ:⿱宀⿳⿰工工⿰工工⿵大土

*3:澤無水曰藪:『呂氏春秋』仲冬記。「山林藪澤」に対する高誘の注「無水曰藪、有水曰澤」。

*4:莱夷:春秋時代まで存在した莱国のこと。今でいう山東半島に位置した。