水泉類第九(井附出)

  • 水波
    • 釋名云、風吹水成波文曰漣、音連。波體轉相連及也。又波浪濤瀾漪字(和名、奈三)。
    • 『釋名』によると、風が水に吹いて波紋ができるのを漣といい、この音は「連」とのことである。波のうねりは相連なって広がっていく。また波、浪、濤、瀾、漪などの字も使う(和名は波【奈三/ナミ】)。
  • 泊漪
    • 唐韻云、淺水貌也。白柏二音。文選師説(左々良奈三)。
    • 『唐韻』によると、浅いところの水の様子だとのことである。音は「白柏」。『文選師説』では(細ら波【左々良奈三/ササラナミ】)。
  • 潺湲
    • 四聲字苑云、水寒凍結也。筆凌反(和名、比。又、古保利)。
    • 『四聲字苑』によると、水が寒くて凍結したものとのことである。音は「筆凌」の反切(和名は氷【比/ヒ】、または【古保利/コオリ】)。
    • 四聲字苑云、海水朝夕來去波涌也。直遙反。又作淖(和名、宇之保)。周處風土記云、海神上朝於天、鰌鯨迎送海神、出入於穴、令水進退爲潮。又抱朴子云、天河與地河海水相搏擊、五水相盪激涌而成潮。
    • 『四聲字苑』によると、海水が朝夕に来たり去ったりする波とのことである。音は「直遙」の反切。または淖とも書く(和名は潮【宇之保/ウシオ】)。『周処風土記』によると、海神上朝2於天1、鰌鯨迎2送海神1、出2入於穴1、令2水進退爲1レ潮。また『抱朴子』によると、天の川は地上の川とともに海水を打ち叩き、五水相盪激涌、そうして潮となる、とのことである。
    • 唐韻云、南人名湍曰瀧。呂江反(和名、多木)。兼名苑云、飛泉一名飛湍、瀑布也。遊名山志、城門山*1兩巌間有水、形如曝布。
    • 『唐韻』によると、瀧を南人は湍と名付けたものとのことである。音は「呂江」の反切(和名は滝【多木/タキ】)。『兼名苑』によれば、飛泉または飛湍とは瀑布とのことである。『遊名山志』には石門山の二つの岩の間を水が流れていて、その形は布を曝したかのようだとある。
    • 四聲字苑云、鑿地取水也。音子郢反(和名、爲)。
    • 『四聲字苑』によると、地面を掘り水をとるとのことである。音は「子郢」の反切(和名は井【爲/イ】)
  • 妙美井
    • 日本記云、妙美井(之三豆)*2
    • 『日本書記』に、妙美井(清水【之三豆/イミズ】)とあり。。
  • 石清水
  • 桔槹*3
    • 辨色立成云、桔槹鐵索井也。結高二音(和名、加奈豆奈爲)。
    • 『辨色立成』によると、桔槹とは鐵索井とのことである。音は「結高」(和名は鉄索井【加奈豆奈爲/カナツナイ】)。

*1:城門山:石門山の誤り。

*2:妙美井(之三豆):『箋注倭名類聚抄』では『日本書紀に「妙美井」は無く、「好井」の誤りとしている。

*3:桔槹:『和漢三才図会』には「今で言う撥ね釣瓶」とある。