河海類第十

    • 川也。音何。
    • 川である。音は「何」。
    • 唐韻云、深水也。徒含反(和名、布知)。
    • 『唐韻』によると、水の深みのあるところとのことである。音は「徒含」の反切(和名は淵【布知/フチ】)。
    • 同上。
    • 説文云、瀬音頼、水流於砂上也(世)。
    • 『説文』によると、瀬の音は「頼」で、水が砂の上で流れるところとのことである(瀬【世/セ】)。
  • *1
    • 唐韻云、他端反、一音專(和名、世)、急瀬也。
    • 『唐韻』によると、音は「他端」の反切で、または「專」(和名は瀬【世/セ】)で、。急な流れの瀬とのことである。
  • 堰埭
    • 唐韻云、堰埭壅水。上音偃、下音徒耐反、又與代同。以土遏水也(和名、井世木)。
    • 『唐韻』によると、堰埭は水をふさぐとのことである。一文字目の音は「偃」、二文字目の音は「徒耐」の反切、または「代」と同じ。土で水を止める物をいう(和名は堰【井世木/イセキ】)。
    • 唐韻云、沼池也。之詔反(和名、奴)。
    • 『唐韻』によると、沼は池とのことである。音は「之詔」の反切(和名は【奴/ヌ】)。
    • 玉篇云、池、直離反。畜水也(和名、以介)。
    • 『玉篇』によると、池の音は「直離」の反切で、水が貯まっているところとのことである(和名は池【以介/イケ】)。
    • 音威淮南子云、決塘發楲。許愼云、楲所以通陂竇(和名、以比)。
    • 『音威淮南子』によると、決塘發楲。『許慎』によると、楲所以通陂穴(和名は楲【以比/イイ】)。
  • 陂隄
    • 禮記云、蓄水曰陂、音碑(和名、豆々三)。隄又作堤
    • 『禮記』によると、水を貯めるものを陂と言い、音は「碑」(和名は堤【豆々三/ツツミ】)ということである。隄は堤とも書く。
    • 纂要云、築土遏水曰塘。音唐。又、謂之隄。
    • 『纂要』によると、土で築き水を止めるものが塘、音は「唐」とのことである。またこれを隄という。
    • 廣雅云、湖音胡。大池也(和名、三都宇美)。
    • 『廣雅』によると、湖の音は「胡」で、大きな池とのことである(和名は湖【三都宇美/ミズウミ】)。
    • 唐韻云、江海也。古雙反(和名、衣)。
    • 『唐韻』によると、江とは海とのことで、音は「古雙」の反切(和名は江【衣/エ】)とのことである。
    • 四聲字苑云、百川所歸也。音改(和名、宇三)。
    • 『四聲字苑』によると、あらゆる川が帰り着くところで、音は「改」(和名は海【宇三/ウミ】)とのことである。。
  • 溟渤
    • 冥勃二音(和名、於保岐宇三)。見日本紀也。
    • 音は「冥勃」(和名は大き海【於保岐宇三/オオキウミ】)。『日本書紀』に見える。
  • 滄溟
    • 四聲字苑云、滄、音倉(阿乎宇三波良)。
    • 『四聲字苑』によると、滄の音は「倉」(青海原【阿乎宇三波良/アオウミバラ】)とのことである。
  • 温泉(流黄附)
    • 冥都山川記云、佷山縣*2有温泉、百病久病入此水多愈矣。一云温泉(和名、由)。
    • 『冥都山川記』によると、佷山県に温泉がある。万病慢性病の者がこの水に入れば多くは快癒するという。これを温泉と言う(和名は湯【由/ユ】)。
    • 釋名云、田間之水曰溝。古侯反。縱横相交稱?也(和名、三曾)。
    • 『釋名』によると、田の間の水の流れが溝であり、音は「古侯」の反切とのことである。縦横に相交わらせて引くものである(和名は溝【三曾/ミゾ】)。
    • 同上。
  • 流黄*3
    • 本草リュウ*4云、石流黄焚石也(和名、由乃阿和、俗云由王)。
    • 本草リュウによると、石硫黄は焚石だとのことである(和名は湯の泡【由乃阿和/ユノアワ】、俗に言う硫黄【由王/ユオウ】)。
    • 四聲字苑云、壍遶城長水坑也。七贍反(和名、保利木)。
    • 『四聲字苑』によると、壍とは城を廻る長い水堀とのことである。音は「七贍」の反切(和名は堀切【保利木/ホリキ】)。

*1:湍:早瀬【はやせ】

*2:佷山縣:湖北省長陽トゥチャ族自治県

*3:流黄:硫黄

*4:リュウ:[足偏に流の旁部]