山谷類第四

    • 『蒋魴切韻』によると、嶽とは高い山とのことである。音は「五角」の反切。または岳と書くが、岳の訓が丘と同じがいまだ不確かである『漢鈔』によると、(御嶽【美太介/ミタケ】)。
    • 蔣魴切韻曰、嶽山高名。五角反。又作岳、訓與丘同、未詳。漢鈔云、(美太介)。
    • 『周禮註』によると、地面が高くなっているところを丘という、とのことである。音は「鳩」(和名は丘【乎加/オカ】)。
    • 周禮註云、土高曰、丘音鳩(和名、乎加)。
    • 丘である。正しくは崗と書く。
    • 丘也。正作崗。
    • 『祝尚丘』によると、峯の音は「敷容」の反切(和名は峯【三禰/ミネ】)。また「尋」という音の岑、「領」という音の嶺、これら2つの字を使うこともある。山が尖り高くなっているところである。
    • 祝尚丘によると、峯音敷容反(和名、三禰)。又作二字岑音尋、嶺音領。山尖高處也。
    • 『孫愐』によると、巓とは山の頂とのことである。音は「都年」の反切(和名は頂【以太々木/イタダキ】)。
    • 孫愐によると、巓山頂也。都年反(和名、以太々木)。
    • 『考聲切韻』によると、峡とは山の間の狭くなっている所とのことである。音は「咸夾」の反切。俗に言う(山の間【山乃加比/ヤマノカイ】)。
    • 考聲切韻云、峡山間陜處也。咸夾反。俗云(山乃加比)。
    • 『陸詞』によると、岫とは山に袖のように空いた穴とのことである。音は「似裕」の反切(和名は岫【久木/クキ】)。
    • 陸詞云、岫山穴似袖也、似裕反(和名、久木)。
    • 『説文』によると、洞とは奥深いところへ続く穴とのことである。音は「徒貢」の反切(和名は洞【保良/ホラ】)。
    • 説文云、洞深邃之貌也。徒貢反(和名、保良)。
  • 坂嶝
    • 『唐韻』によると、坂とは地面が切り立ち険しい地形とのことである(和名は坂【左加/サカ】)。嶝とは小さな坂である。音は「都蠟」の反説。
    • 唐韻云、坂地険也(和名、左加)。嶝小坂也。都蠟反。
    • 『説文』によると、麓とは山の根元のとのことである。音は「禄」(和名は麓【不毛止/フモト】)。
    • 説文云、麓山足也。音禄(和名、不毛止)。
  • 島嶼
    • 『説文』によると、島とは海にある山であり、依ラ止ルベシナリ。音は「都皓」の反切。また音は「鳥」とも(和名は島【之萬/シマ】)。『唐韻』によれば、嶼の音は「徐呂」の反切。上聲之重「序」と同じ、海にある洲とのことである(和名は同じ)。
    • 説文云、島海中山、可依止也。都皓反。一音鳥(和名、之萬)。唐韻云、嶼徐呂反。上聲之重與序同、海中洲也(和名、同上)。
    • 『唐韻』によると、岬とは山のそばとのことである。音は「古押」の反切。『日本私記』によると(岬【三左木/ミサキ】)とのことである。
    • 唐韻云、岬山側也。古押反。日本私記云(三左木)。
    • 『功程式』によると、甲賀杣、田上杣が見える。杣は【會萬/ソマ】と読むが、由来は不明である。ただし『功程式』では修理職の算師である山田福吉などが、弘仁十四年*1に撰上している。
    • 功程式云、甲賀杣、田上杣。杣讀會萬、所出未詳、但功程式者、修理筭師山田福吉等、弘仁十四年所撰上也。
  • 谿谷
    • 『爾雅』によると、水が山から出て川に入るところを谿というとのことである。音は「古奚」の反説。または溪と書く〈和名は渓【太爾/タニ】〉。二字目も同じで、水が谿と相属するを谷という。この音は「穀」、または「欲」とも。『唐韻』には壑とある。この音は「呼各」の反切。これも谿谷のことである。
    • 爾雅云、出山入川曰谿。古奚反。又作溪。(和名、太爾)。下同、水與谿相屬曰谷、音穀、一音欲、見唐韻、壑呼各反、猶谿谷也。
    • 『釋名』によると、澗*2は二つの山の間にあるとのことである。音は「古晏」の反切。
    • 釋名云、澗在兩山間也。古晏反。

*1:弘仁十四年:ユリウス暦823年2月15日〜824年2月3日。

*2:澗:読みは谷水【タニミズ】。