鬼魅類第十七

    • 四聲字苑云、鬼居偉反(和名、於爾)。或設云、隠字(音、於爾訛也)。鬼者隠而不欲顯形。故俗呼曰隠也。人死魂藭也。一云、呉人曰鬼、越人曰キ*1、音蟣又祈反。
    • 『四声字苑』によると、鬼の音は「居偉」の反切(和名は鬼【於爾/オニ】)とのことである。ある説では隠という字も使うという(この音が訛って【於爾/オニ】となったのである)。鬼とは隠れ、そして姿を現したがらないものである。だから俗に隠と呼ぶのである。死んだ人の魂神である。また呉の人は鬼と言い、越の人はキ*2というとのことで、音は蟣または祈である。
  • 餓鬼
    • 孫愐切韻云、餓鬼鬼也。餓五箇反。訓與飢同久飢也。内典云、餓鬼(和名、加岐)。其喉如針、不得飲水、見水則變成火。
    • 『孫愐切韻』によると、餓鬼とは鬼とのことである。餓の音は「五箇」の反切で、飢と同じに訓じて、長く飢えているを意味する。『内典』によると、餓鬼(和名は餓鬼【加岐/ガキ】)はその喉は針のようで水を飲めず、水を見るとたちまち水は火となる、とのことである。
  • 瘧鬼
    • 蔡邕獨斷云、昔顓頊*3有三子、亡去而爲疫鬼、其一者居江水、是爲瘧鬼(和名、衣也美乃加美)或(於爾)。
    • 『蔡邕独断』によると、その昔の顓頊には3人の子がおり、彼らは死んだ後に疫鬼となった*4。長男は蜀を流れる江水に住み、瘧鬼(和名、疫病みの神【衣也美乃加美/エヤミノカミ】)あるいは(鬼【於爾/オニ】)となった。
  • 邪鬼
    • 日本記云、邪鬼(和名、安之岐毛乃)。
    • 『日本書記』によると、邪鬼(和名は悪しきもの【安之岐毛乃/アシキモノ】)とのことである。
  • 窮鬼
    • 遊仙窟云、窮鬼師説(伊岐須太萬)。
    • 『遊仙窟』によると、窮鬼(生魑魅【伊岐須太萬/イキスダマ】)と注釈されている。
  • 魑魅
    • 山海經云、魑魅(和名、須太萬)。鬼類也。野王云、魑魅老物精也。文選蕪城賦云、木魅山鬼(和名、古太萬)。
    • 山海経』によると、魑魅(和名は魑魅【須太萬/スダマ】)とのことである。鬼の一種である。『野王』によると、魑魅とは年経たものの精だとのことである。『文選蕪城賦』によると、木魅山鬼(和名は木霊【古太萬/コダマ】)とのことである。
  • 魍魎
    • 左傳注云、魍魎罔兩二反。日本記云、(和名、美豆波)水藭也。
    • 『左伝注』によると、魍魎の音は罔兩とのことである。『日本書記』によると、(和名は罔象【美豆波/ミヅハ】)であり水神とのことである。
  • 醜女
    • 日本記云、醜女(和名、志古女)。或説云、黄泉之鬼也。世人爲恐小兒稱許許女者此語之訛。
    • 『日本書記』によると、醜女(和名は醜女【志古女/シコメ】)とのことである。黄泉の鬼ともいう。世人爲恐小兒稱。【許許女/ココメ】というのはこの言葉の訛ったものである。
  • 天探女
    • 日本記云、天探女(和名、阿萬佐久女)、一云(阿萬乃佐久米)
    • 『日本書記』によると、天探女(和名は天探女【阿萬佐久女/アマサグメ】)、または(【阿萬乃佐久米/アマノサグメ】)とのことである。

*1:キ:[畿の田を鬼にする]

*2:キ:[畿の田を鬼にする]

*3:顓頊:【センギョク】。五帝の1人。黄帝の後を継いだ。

*4:顓頊には3人の子がおり、彼らは死んだ後に疫鬼となった:『捜神記』16巻には、次男は若水(蜀、四川省を流れる青衣江のこと)に住み魍魎鬼と、三男はは宮廷に住み小児鬼となった、とある。