涯岸類第十一

  • 涯岸
    • 集注云、水邊曰涯。五佳反。涯陗而所高曰岸(和名、岐之)。
    • 『集注』によると、水辺を涯といい、音は「五佳」の反切とのことである。涯が切り立ち高くなっているのを岸という(和名は岸【岐之/キシ】)。
    • 四聲字苑云、浦大川旁曲渚、船隱風所也。傍古反(和名、宇良)。
    • 『四聲字苑』によると、浦とは大川旁曲渚、船が風から隠れる所である。音は「傍古」の反切(和名は浦【宇良/ウラ】)。
    • 韓詩注云、一溢一否曰渚。昌與反(和名、奈木左)。
    • 『韓詩注』によると、波が寄せては返すところを渚というとのことである。音は「昌與」の反切(和名は渚【奈木左/ナギサ】)。
    • 唐韻云、濱水際也。音賓(和名、波萬)。
    • 『唐韻』によると、浜とは水際とのことである。音は「賓」(和名は浜【波萬/ハマ】)。
    • 爾雅云、水中可居者曰洲。李巡曰、四方皆有水也。音州(和名、須)
    • 『爾雅』によると、水に囲まれた居住可能な場所を洲というとのことである。『李巡』は、その四方皆水だとしている。音は「州」(和名は洲【須/ス】)
    • 唐韻云、汀水際平沙也。他丁反(和名、三左木*1)。
    • 『唐韻』によると、汀とは水際の平たい砂地とのことで、音は「他丁」の反切(和名は汀【三幾八/ミギワ】)。
    • 文選海賦云、海溟廣潟*2。思積反、與昔同。師説、(加太)。
    • 『文選海賦』によると、海の浜辺は広い潟だとのことである。音は「思積」の反切で、昔と同じ。『師説』で言う(潟【加太/カタ】)。
    • 説文云、湊水上人所會也。音奏(和名、三奈止)。
    • 『説文』によると、湊とは水のほとりで人々が会するところである。音は「奏」(和名は港【三奈止/ミナト】)。

*1:三左木:『箋注倭名類聚抄』では【三左木】は誤りだとしている。理由として、『類聚名義抄』『伊呂波字類抄』では【三幾八/ミギワ】と訓じ、【三左木/ミサキ】と訓じていないことを挙げている。

*2:文選海賦云、海溟廣潟:『箋注倭名類聚抄』によると、『文選海賦』にあるのは「襄陵廣潟」で、司馬遷史記』夏本記に「海濱廣舃」とあり、引用元違いで「溟」は誤字としている。