『中つ国の英雄』(DeNA):ゲームについて

いや、これはゲームではないのだが、それは兎も角。
まず感じたのは、ストーリというか展開は丁寧、ということだ。
第一章では、ホビット庄を旅立ち、夜の古森を抜け、夜陰に紛れて粥村を脱出する。そして風見が丘で重傷を負い、その傷を治すため最後の憩館を目指すことになる。第二章以降も同様で、モリア坑道に入るにしても、まずカラズラス越えを試みてからモリア入りをするなど、映画版に準拠する展開で「うんうん、ありがちありがち」などと思いながらも、実際好ましいものを感じている。パーティ構成もそうだ。旅の仲間と同じ9人でパーティを組むようにできている。
にも関わらず、このシステムとそれから敵の選択は一体なんなんだろう。
システムは、なんと言えばいいのだろう。考えたり決断したりする要素はまったくない。ただ画面をタップするだけとなる。ここに魅力を見出すことは非常に困難だ。無料なんだからこれでもいい、仕様や開発に人月は掛けられない、ということなんだろうか。『指輪物語』というだけで課金が見込める、といった判断が成り立つのか、非常に疑問である。正直、小説であれ映画であれ原作ファンだという理由でコレを始めた人は、開始直後に心を折られて課金しようなどと思いもせず脱落していくとしか思えない。
そしてそれを助長するのが第一章の最終シーン、風見が丘だ。いままで敵はオークやウォーグだけだったのが、ここで新しい敵が登場する。それがよりにもよってムーマキルである。じゅうだ。オリファントだ。あの映画の最後の方の合戦シーンで登場していた象さんだ。レゴラスが鼻の上を滑り降りてた象さんだ。まずここで心が折れる
そして第二章が裂け谷で始まり、そこで出会う新敵が海賊【Corsair】で、折れた心が更に折られる。原作だと、これまた最後の方の城の防衛戦で登場する敵である。
そういう風に敵キャラが、どうしようも無いほど「ナンデ!?」って叫びたくなる選択になっている。
ゲーム中に登場する敵は、オーク、ウォーグ、ムーマク、海賊、水中の監視者、ウルク=ハイ、クラーケン、トロル、ハラドリム、恐るべき獣で全部。確かに原作に登場する生物の種類もそう多くない、というのはあるだろう。それでも敵の配置を換えるだけで、もう少し「らしく」はなっただろうし、蜘蛛やカラスなど他にも出せる敵はあったと思う。残念どころではない。
結局、展開にこそそれっぽさはあったものの、それ以外は全部ダメとしか言いようがなく、ライセンスとか開発とか投資した金額に対して、一体どれだけの利益が見込めたのだろうか、それくらいしか興味が残らない作品だった。
あ、あと肝心要のカードだが、課金ガチャで出てくるSレアでイラストの無名戦士とか映画のモブキャラがでるとは思いもしなかった。聞いた話だと他の作品に比べてSSレアとかSレアの出る確率が高いとは言え驚きだ。
頻度の段階はSSレア、Sレア、レア、ノーマルとなっているが、私の持ったカード内容に対する期待度からすると、レア、アンコモン、ノーマル、ドノーマルでも充分だよ、これ。