その21:北海大王

 そのエセルレッド王の統治下のイングランドでは、再びデーン人による襲撃が激化していました。まず一度、エセルレッド王はデンマーク王スウェインとの戦争で勝ち負けを繰り返した挙句、1013年にイングランドは征服されました。エセルレッド王は妻の実家を頼り、ノルマンディに亡命しますが、一ヶ月ほどでスウェインが落馬で命を落としてしまい、デンマーク軍は一時引き上げます。そしてエセルレッド王は帰国し、再び王位につきました。
 しかし1015年、今度はスウェイン王の息子、クヌート王がイングランドに上陸します。エセルレッド王はこんども亡命をしようとしたのかもしれませんが、1016年に病のために命を落としてしまいました。そして王妃エマも兄弟であるリシャールが治めるノルマンディに亡命しようとしたところを、クヌート王の家来らに掴まります。
 同年クヌート王はイングランドを征服します。そして彼はエセルレッド王の未亡人であるエマと結婚し地盤を固め、イングランド古来の伝統と法を尊重するのことでイングランドを統治しました。
 このクヌート大王は一時はノルウェー王も兼ねる勢いで、その伝承では北海大王と呼ばれましたし、またキリスト教化にも勤めましたので聖王とも呼ばれています。
 今、デンマーク王家を指す言葉としてクヌートの子ら【Knytling】という言葉があるそうですし、クニートリンガ・サガという伝承もあるそうです。