木村航『ぺとぺとさん』(エンターブレイン)

 前作である「秘神なんたら(失念失敬)」に比べると段違いに面白い。前回は一体何をしておられたのですか!って感じだ。
 この作品世界では、我々と同じ日常世界に妖怪がれっきとして存在しており、人間たちはその存在を認識している。そうして妖怪たちは人間同様に日常生活を送っていて、とまあ、ここまで書けば良くある通り、人間と妖怪との軋轢が多少なりとも書かれるわけですが、そんなことには振り回されずに、ドンと人間と妖怪の学園物を書いて読者を萌え狂わせようとしているのが凄いと思う。共感をやはり誘うのは、主人公の女の子の視点で書かずに、同級生の男の子の視線で、その女の子を見つめ続けているところかな。
 あとこの作者の文体は、よくよく擬音を使うのだけれど、今回はその擬音を感情表現にしてしまい*1、うわーやられた!って感じで、企画段階から映像化などを狙っているのか?と恐ろしくなったのも事実。

*1:主人公の妖怪ぺとぺとさんはその時の感情などによって足音が変わる