ガイウス・ユリウス・カエサル『ガリア戦記』(講談社)
しかしまあ、恐らくあらゆる登場人物の名前がローマ風に直されているわけで、その空気に馴染んでしまうと、エルリック→エルリクス、コルマック→コルマクスとか脳内で直してしまいそう。
兎も角、読んでみて思ったのは「ガリア人ってのはダメな連中だなァ」ということで、ウェルチンゲトリクスを除いては、どうしようもないです。翻ってゲルマン人はというと、こちらの方がよほど蛮人だとばかり思っていたら、ゲルマン人の方が頭も回るし口も回るという有り様で、ケルトに対する夢砕かれました。こうなってはオーランス人はケルトというよりゲルマンがモデルになって良かったというものです。いや本当、ケルタエしょんぼり。
あと笑ったのが、キケロの話し。
この『ガリア戦記』というのは全部で8巻から成っていて*1、1巻につき1年間の内容を書き記すという構成になっています。そしてあと解説を読んでみて知ったのですが、何時かかれて何時出版されたについて、
- 毎年書かれて、毎年1巻ずつ刊行された。
- 毎年書かれて、BC52〜51年頃まとめて刊行された。
- BC52〜51年頃にまとめて書かれ、まとめて刊行された。
など、いくつか説があるようなのですが、その内の1は可能性が低いだろうとして、その理由の1つに上げているのが
「もし毎年刊行されていたのならキケロが絶対その都度手紙で書いているだろうし、その著書でも触れているに違いない」
というもので、手紙魔キケロここにあり、という感じで大笑いしました。
とまあ、恥ずかしい話し、実はこれが始めての読了だったのですが、いやしかし、これはもっと前に、少なくとも大学生の頃に読んでいたら、一体どうなっていただろう? 絶対、文章は伝染っていたろうな、と思います。
文章は非常にザクザクと簡潔で、そしてそんな簡潔な文章で、ある意味箇条書きとも思える文章で、現場の報告という呈をとっていながら、それでも臨場感に溢れているというのは、矛盾しているとしか思えないのにサラリと実現していて、これはなんと言ったらいいのか。報告書でありながら読ませる文章という、すごく目指すべきものがここにはありました。
何はともあれ、PBMのマスタなら、必読だと思うのですがどうでしょう?