風雪類第三

    • 『春秋元命包』によると、陰陽が怒ることによって風が吹くとのことである。
    • 春秋元命苞云、陰陽怒而爲風。
  • *1
    • 『文選』の詩には、「回飆は高樹を巻く」*2、と見える。『兼名苑』によると、飆とは暴風で下より吹き始め昇っていく、とのことである。発音は「焱」(和名は旋風【ツムジカゼ/豆無之加世】)。
    • 文選詩云、回飆巻高樹。兼名苑云、飆暴風從下而上也。音焱(和名、豆無之加世)。
    • 『孫愐』によると、嵐とは山より吹き出る風とのことである也。発音は「盧含」の反切(和名は嵐【アラシ/阿良之】)。
    • 孫愐云、嵐山下出風也。盧含反(和名、阿良之)。
  • 暴風
    • 史記』には、「暴風雷雨」と書かれる。『漢鈔』によると、(疾風【ハヤチ/八夜知】、または野分の風【ノワキノカゼ/乃和木乃加世】)とのことである。
    • 史記云、暴風雷雨。漢鈔云、(八夜知、又乃和木乃加世)。
  • 大風
    • 漢書』には、「大風吹き、雲飛揚す」*3と書かれる。日本では(大風【オオカゼ/於保加世】)と言う。
    • 漢書云、大風吹兮雲飛揚。此間云(於保加世)。
  • 微風
    • 『崔豹古今註』には、「柳は微風で大きく揺れる」と書かれる。日本では(小風【コカゼ/古加世】)と言う。
    • 崔豹古今註云、柳微風大揺。此間云(古加世)。
    • 『説文』によると、雪は冬の雨だということである。『五經通義』によると、暖かければ散り雨水となり、寒ければ凝り霜雪となる、いずれも大地より昇った物だ、とのことである。また[雨冠に彗]とも書く。発音は「切」(和名は雪【ユキ/由木】)。
    • 説文云、雪冬雨也。五經通義云、陽則散爲雨水、寒則凝爲雪霜、皆從地而昇者也。又作[雨冠に彗]音切(和名、由木)。
  • 沫雪
    • 『日本書記』によると、沫雪(淡雪【アワユキ/阿和由木】)。その弱さは水泡のようである。
    • 日本記云、沫雪(阿和由木)。其弱如水沫。
    • 『陸詞切韻』によると、霜とは露が固まったものとのことである。発音は「蒼」。(和名は霜【シモ/之毛】)。
    • 陸詞切韻云、霜凝露也。音蒼(和名、之毛)。
  • テン[雨冠に執]
    • 『説文』によると、テン[雨冠に執]とは早霜のことである。発音は「丁念」の反切(和名は初霜【ハツシモ/八豆之毛】)。
    • 説文云、[雨冠に執]早霜也。丁念反(和名、八豆之毛)。
    • 『陸詞』によると、雹とは雨が氷ったものとのことである。発音は「補角」の反切(和名は霰【アラレ/阿良禮】)。
    • 陸詞云、雹雨氷也。補角反(和名、阿良禮)。
    • 『爾雅註』によると、霰とは氷と雪が混ざって降ることである。発音は「七見」の反切。また[雨冠に鮮]とも書く(和名は【ミゾレ/美曾禮】*4)。
    • 爾雅註云、霰氷雪雑下也。七見反、又作[雨冠に鮮](和名、美曾禮)。
    • 『孫愐』によると、霙とは雨と雪が混ざって降ることである。発音は「於驚」の反切。『文選』雪賦の師説にも見える。(和名は霙【ミゾレ/三曾禮】)。
    • 孫愐云、霙雨雪相雑也。音於驚反。文選雪賦師説曰、(三曾禮)。
    • 『三禮義宗』には、「白露は八月節、寒露は九月節」*5と見える。発音は「路」。『白虎通』には「甘露美露也、降則物無不美盛矣」と見える。(和名は露【ツユ/豆由】)。
    • 三禮義宗云、白露八月節、寒露九月節。音路。白虎通云、甘露美露也。降則物無不美盛矣。(和名、豆由)。

*1:飆:原文では編は焱、旁は風

*2:「回飆は高樹を巻く」:顔延之『秋胡詩』

*3:「大風吹き、雲飛揚す」:劉邦『大風歌』の「大風起兮雲飛揚、威加海内兮帰故郷、安得猛士兮守四方」か。

*4:和名は【ミゾレ/美曾禮】:現代の気象上では霰となる

*5:「白露は八月節、寒露は九月節」:二十四節気