雲雨類第二

    • 『説文』によると、雲とは山川から出る気のことである。発音は「王分」の反切(和名は雲【クモ/久毛】)。
    • 説文云、雲山川出氣也、王分反(和名、久毛)。
    • 『唐韻』によると、霞とは赤気の雲のことである。発音は「胡加」の反切(和名は霞【カスミ/加須美】)。
    • 唐韻云、霞赤氣雲也、胡加反(和名、加須美)。
    • 『爾雅』によると、地気が天に昇ったものを霧と言うとのことである。発音は「亡遇」の反切で「務」と同じ(和名は霧【キリ/岐利】)。考えるに、水気のことである。『老子経』で言う「天にあれば霧露となり、地にあれば泉源となる」とはこのことである。『兼名苑』によると、蒙と読む「雺」、分と読む「雰」とも言い、水気が樹木につき雰となるとのことである。
    • 爾雅云、地氣上天曰霧。亡遇反、與務同(和名、岐利)。今按水氣也。老子經云、在天爲霧露、在地爲泉源、是也。兼名苑云、一名雺音蒙、一名雰音分、水氣著樹木爲雰也。
    • 『毛詩註』によると、螮蝀が虹だとのことである。発音は「帝董」。また螮は蝃とも書く(和名は虹【ニジ/爾之】)。『兼名苑』によると、虹は蜺とも言うとのことである。発音は「五稽」の反切で「鯢」と同じ、また「五結」や「倪擊」の反切。考えるに、雄は虹と言い、雌は蜺と言うのであろう。
    • 毛詩註云、螮蝀虹也。帝菫二音螮又作蝃(和名、爾之)。兼名苑云、虹一名蜺、五稽反、與鯢同。又、五結、倪撃二反。今按、雄曰虹、雌曰蜺也。
    • 『説文』によると、雲中より出て降る水のことである。発音は「禹」(和名は雨【アメ/阿女】)。
    • 説文云、水從雲中而下也。音禹(和名、阿女)。
  • 霡霂
    • 『兼名苑』によると、細雨は霡霂とも言うとのことである。小雨である。発音は「麥木」(和名は小雨【コサメ/古左女】)。
    • 兼名苑云、細雨一名霡霂。小雨也。麥木二音(和名、古左女)。
    • 『兼名苑』によると、霖とは3日以上降る雨のことである。発音は「林」(和名は長雨【ナガアメ/奈加阿女】)。考えるに、連雨や苦雨のことである。『爾雅註』によると、霖は「淫」と発音する霪とも言うとのことである。久雨のことである。
    • 兼名苑云、霖三日以上雨也。音林(和名、奈加阿女)。今按、又連雨、又名苦雨。爾雅註云、霖一名霪音淫、久雨也。
    • 『文字集略』によると、霈とは大雨のことである。発音は「沛」。『日本私記』によると、火雨(和名は火雨【ヒサメ/比左女】)、雨氷(同上)とのことである。考えるに、俗に(【ヒフル/比布留】)とも言う。
    • 文字集略云、霈大雨也。音沛。日本私記云、火雨(和名、比左女)、雨氷(同上)。今按、俗云(比布留)。
  • 暴雨
    • 『楊氏漢語鈔』によると、白雨(和名は村雨【ムラサメ/無良左女】)のことである。
    • 楊氏漢語鈔云、白雨(和名、無良左女)。
  • シュウ[雨冠に衆]雨
    • 『孫愐』によると、[雨冠に衆]雨は小雨である、とのことである。発音は「終」と同じ。『漢鈔』によると、(時雨【シグレ/之久禮】)。
    • 孫愐曰、[雨冠に衆]雨小雨也。音與終同。漢鈔云、(之久禮)。
    • 『説文』によると、霤とはひさしの前より雨水が流れ落ちる、とのことである。発音は「溜」(和名は【アマノタリ/阿萬乃太利】*1)。
    • 説文云、霤屋簷前雨水流下也。音溜(和名、阿萬乃太利)。
    • 『唐韻』によると、潦の発音は「老」(和名は庭泉/潦【ニワタズミ/爾八太豆美】)。雨水のことである。
    • 唐韻云、潦音老(和名、爾八太豆美)。雨水也。
  • 沫雨
    • 淮南子註』によると、沫雨は潦の上に雨が降り泡が起るのは覆盆のようだ、とある(和名は泡沫【ウタカタ/宇太加太】)。
    • 淮南子註云、沫雨雨潦上、沫起若覆盆。(和名、宇太加太)。

*1:【アマノタリ/阿萬乃太利】:『新撰字鏡』には【アメシタタル/阿米志太太留】、『類聚名義抄』には雨滴【アマシダリ/アマシタリ】とあり。